玩偶姐姐

ステークホルダーダイアログ

TODA BUILDINGがつくる「アートとビジネスの結節点」とは

2024年11月に開業したTODA BUILDING。コンセプトは「人と街をつなぐ」。当社は、街に開かれたTODA BUILDINGを中心に、アートを取り入れ生かす様々な取り組みを行っている。アートは、私たちの仕事や日常にどのような影響をもたらし得るのか。そもそも、企業とアートはどのような関係を築いていけるのか。海外企業のように、アートを事業として取り組む意味を伝え、具体的に提案し続けてきた上坂真人氏をゲストに迎え、企業?社員?仕事へと広がるアートの可能性についてダイアログを実施した。

开催日:2026年1月28日
開催場所:玩偶姐姐 本社ビル

100年先の存在意義を描くTODA BUILDING

上坂
TODA BUILDING(TODAビル)は本当にすばらしいビルですね。私は父が建設会社勤務だったこともあり、建設業界にはどこか親しみを感じる一方で、正直に言うと、少し泥臭いイメージを持っていましたが、TODAビルを拝見して、その印象が大きく変わりました。
社长
ありがとうございます。本社ビルの建て替えを考えたときに、まず议论になったのは、「この京桥という场所で、どういう意味を持つビルをつくるのか」という点でした。
職人の町として発展した京橋は、歌川広重や北大路魯山人など、日本を代表する芸術家ともゆかりがあり、現在も多くのギャラリーが集まるエリアです。TODAビルは技术的には100年後もこの場所にあり続ける存在です。この土地で120年以上事業を続けてきた私たちが、100年後も存在意義を発信し続けるためには、最先端技术や免震構造といった機能面に加え、アートとの関係性は避けて通れないと感じました。
私たちは単にビルを建てるだけでなく、このビルというキャンバスに、これから100年かけて色々なものを描いていきたい。その结果、100年后に「ああ、いいビルだったね」と言われるような存在を目指しています。
上坂
私と玩偶姐姐とのご縁は、数年前にさかのぼります。2021年に、アートを広げる活动をしていた顷、玩偶姐姐のアート事业に関する説明会に参加したのが最初でした。
その场で印象的だったのは、外部のアートディレクターや有识者ではなく、社员の方ご自身が试行错误のプロセスを语っていたことでした。さらに、「创作?交流?発信」だけでなく、「评価?贩売」という言叶が、きちんと使われていたことにも惊きました。出版业界もそうですが、どの分野でも本来は「评価」と「贩売」がなければ文化は育っていきません。その重要性を社员の方自身が语っていたことに、非常に感铭を受けました。

アートを日常にするということ

APK PUBLIC Vol.1より
毛利悠子氏による《分割された地震动轨跡模型滨-1,2》(2024年)
社长
中学生の頃は、画家になりたいと思っていたほど、もともと芸術には興味関心がありました。ただ、それまでは美術館に足を運ぶなど、どちらかといえば非日常の体験として向き合ってきたと思います。このビルでは、京橋という街がビジネスの中心地ということもあり、行き交うビジネスパーソンが日常の中でアートを感じられる环境をつくりたいと考えました。
私自身、このビルに来てからは、毎朝、地下の车寄せから直接部屋へ上がらずに、あえて1阶で降りてアートを眺めてからオフィスに向かうようにしています。エスカレータに乗る前にらせん阶段の作品を见上げほんの少し立ち止まるだけでも、気分転换になりますし、何かを感じるきっかけになる。その积み重ねには、确かな「効果」があると感じています。
上坂
それは素晴らしい実践ですね。日本では、アートは「美术馆へ见に行くもの」という认识が非常に强いと感じます。しかし、実はアートの本质的な楽しさは、购入して手元に置き、生活の一部にして初めて実感できるものです。
以前、私立の中高一贯校のプロジェクトで、生徒の家庭にアート作品を2週间贷し出す试みを行いました。すると、リビングにアートを饰ったことで家族の会话が剧的に増え、子どもたちが作品を自分なりに解釈し始めたのです。ある家庭では、「自分の部屋に饰りたい」と兄弟で取り合いになったそうです。
社长
2週间でそこまで変わるのは、非常に兴味深い话ですね。
上坂
返却の际には、「明日から壁が寂しくなる。どこに行けばアートを买えますか」と闻かれることが多くありました。つまり、これまでアートを买うという选択肢がなかっただけで、一度体験すれば、その価値は确実に伝わるのです。
TODAビルに「APK PUBLIC」のような仕組みを設け、本格的なギャラリーを誘致し、作品を「見る」だけでなく「買う」という選択を提示していることには、大きな意味があると思います。

公司?社员?仕事へ広がるアートの波

APK PUBLIC Vol.1より
野田幸江氏による《garden -a- <この風景の要素>》(2022-2024年)
上坂
欧米や中国、韩国では、アートが生活に欠かせないものだという认识が前提にあり、公司が美术馆やアートフェアに関わることもごく自然です。一方、日本では、公司とアートの距离がまだ远いと感じています。
数値化できるものではありませんが、公司が文化やアートにどう向き合っているかは、国际的な评価の中で确実に见られているポイントです。海外のビジネスパーソンが日本の大公司を访れた际、アートの気配がほとんど感じられない空间に、物足りなさを覚えることもあるでしょう。その中で、罢翱顿础ビルは非常に分かりやすいメッセージを発していると感じます。
社长
このビルでアートに触れることで生まれる「気持ち良さ」は、理屈抜きに伝わるはずです。ビジネスワーカーがふとした瞬间に立ち止まり、気分転换できる。それこそが、このビルがアートを取り込む大きな意义だと思っています。
上坂
见るだけで终わらず、次のステップに进もうとしている人は、确実に増えていると感じます。特に御社の社员の皆さんは、そうした感度を持っている人が多い印象がありますね。
社长
建設に携わる人間であれば、アートが加わることで空間の質が高まる感覚は分かると思いますね。私たちは、建筑という「キャンバス」を扱っています。アートがなくても「気持ちいい空間」を追求してきました。だからこそ、そこにアートが加わることで、空間がさらに豊かになると感じています。
上坂
社員の皆さん含めて、アートを日常のものとして捉えていく、その過程に今はいるのだと思います。そうした意味で言えば、同じビルの中にこれだけギャラリーやパブリックアートがそろっている环境は、とても貴重です。だからこそ、この环境を生かして、社員の皆さんが自然に足を運ぶような流れをつくれたらいいと思います。
例えば社员向けに、アートの専门家で着名な方を招き、アートの楽しさを语ってもらう机会があってもいいのではないでしょうか。最初から理解しようとしなくても、「买う」「饰る」といった段阶まで进まなくても构いません。まずは、知っている人の话を闻き、同僚と「じゃあ、昼食のついでにアートを见に行ってみようか」という、気軽なきっかけが生まれれば十分だと思います。
同時に、これから入居される企業など、建筑やアートに必ずしも馴染みのない人たちが、この空間でどのように感じるのかも大切です。そこまで含めてこそ、このエリアでアートに取り組む意味が生まれてくるのではないでしょうか。
社长
これまで私が建设に携わった案件でも、アートを取り入れた建物はいくつかあるのですが、入居公司の方から「アートがあったのですか?」と言われることも少なくありません。数亿円もするようなアートを导入していても、兴味がなければ気づかれない。
そのもどかしさを感じる场面は正直多いのです。だからこそ、そうした方々にも、何かしらの形でアートの存在や価値が届くような在り方を模索していきたいと思っています。
上坂
私もアートに関わるようになってから、海外を访れて「こんなにもアートが身近にあったのか」と初めて気づきました。それまでは、正直なところ、ほとんど目に入っていなかったのです。こうしたアートとの向き合い方の変化は、「记念日のある革命」ではありません。明治维新のように、いわば革命记念日のない革命で、少しずつ、时间をかけて进んでいくものだと思います。ライフスタイルが変わるには、10年単位の时间が必要でしょう。だからこそ公司が取り组む意义があるとも言えます。アートに取り组むことは未来のライフスタイルを生み出していくことであると思います。
一方で、変化の兆しとして、ビジネスパーソンのアートに対する関心は、确実に高まっているのを感じます。例えば、御社の社员の方が営业先でふとアートの话题に触れたとき、先方から「実は、アートを取り入れたいと考えていた」といった具体的な反応が返ってくることもあると思います。また、そこまで踏み込んだ话にならなかったとしても、「この会社とは、文化や感性の话が自然にできる」という印象が残るだけでも、结果的には他社との差别化につながっていくのではないでしょうか。

正解を求めない、现代アートの楽しみ方

APK PUBLIC Vol.1より
持田敦子氏による《厂迟别辫蝉》(2024年)
社长
罢翱顿础ビルでは主に现代アートを取り入れています。美丑で言えば、美しければ気持ちがいいわけですが、现代アートには、必ずしも美しいとは言えないものも多く存在します。その意味を読み解こうとすると、难しさを感じることもあります。
上坂
私は、现代アートの価値は「问题提起」だと思っています。人それぞれ悩みや感覚が违う以上、すべての表现に共感できないのは自然なことですから、丑いと感じる作品があっても良いのではないでしょうか。英语の歌を、歌词の意味が分からなくても楽しめるように、アートもすべてを理解しようとする必要はないと思っています。美术馆でも、気になる作品だけを见て、一つでも今の自分と重なるものがあれば十分だと思います。
社长
确かに评価というものは、必ずしもその时代の感覚だけで决まるものではありませんしね。印象派も、発表当时は美しいとは评価されていませんでしたし、マネの作品も、当时の画坛では评価されず、时间を経て価値が认められました。今の现代アートも、20年先には违った见方をされているかもしれません。
上坂
そうですね。今の时点で分からなくても、それ自体は不自然なことではないと思います。アートをきっかけに会话が生まれたり、感覚や思考が刺激されたり、気持ちが切り替わったりする。そうした体験の価値は数値化できませんが确かにあると思います。ビジネスパーソンの视点で言えば、アートは新しい発想のヒントにもなります。そうした意味で私は、人生を豊かにする楽しみとしてのアートと、ビジネスにおける実利的な世界性の両方を见据えています。

地域とともに描く、これからのTODA BUILDING

APK PUBLIC Vol.1より
小野泽峻氏による6つの球体が振り子のように揺れ动く《演ずる造形》(2024年)
社长
罢翱顿础ビルを拠点としたアートの取り组みを进める上で、まず大切なのは、この地域にどう贡献していくかだと考えています。玩偶姐姐は京桥に生まれた会社であり、その场所とどう向き合うかという考え方は、私たちの原点でもあります。このビルで取り组んでいることが、「いいね」「面白いね」と感じてもらえて、それが少しずつ周囲に伝わっていく。そうした积み重ねによって、定着していくものがあると思っています。また、最近では、さまざまなプロジェクトを提案する际にも、このアートプロジェクトを一つのテーマとして语れるようになってきたという実感があります。
建设に携わる人间は、もともと根底にアート的な思考を持っているはずです。社员の中にも、すでに何かを感じ取っている人はいるでしょう。かつての戸田ビルと、今の罢翱顿础ビルで、どう感じ方が违うのか。そろそろ、そうした声にも耳を倾けてみたいと改めて感じました。
上坂
社员の皆さんには、まずは「一度、3阶にあるギャラリーに足を运んでみる」ことから始めていただけたらと思います。无理やり何かを买わされることはありませんから(笑)。同僚とアートを见ながら、感想を共有したり、値段の当てっこをしたり。そのくらいの気軽さがいいんです。そうした小さな行动から、5%、10%の人が、空间提案や営业の现场にも、确実に変化が生まれてきます。日本のビジネス界にアートを取り入れる、その静かな変化の担い手として、玩偶姐姐の社员の皆さんには大いに期待しています。
  • ※
    APK PUBLIC:新進アーティストやキュレーターによる都市の風景を担う大規模な作品発表の場として、TODA BUILDINGの共用空間を活用し、更新性のあるパブリックアートを展開するプログラムです。来街者やオフィスワーカーが日常的に作品のある空間を体感し、クリエイティビティが刺激されることで、視野の拡張をもたらし日々の生き方や働き方を豊かにしていくことを目指します。第1弾「APK PUBLIC Vol.1」は、2024年11月2日のTODA BUILDING開業とともに展示を開始し、2026年3月2日に終了しました。第2弾「APK PUBLIC Vol.2」は2026年6月1日より展示開始。

参考 APK PUBLIC Vol.1

ダイアログ参加者プロフィール

上坂 真人(うえさか まこと)氏

早稲田大学政経学部卒業後、朝日新聞社出版局(現?朝日新聞出版)に入社。日経マグロウヒル社(現?日経BP社)などを経て、マガジンハウス、コンデナスト?ジャパンなどの出版社で、雑誌の創刊やリニューアルを手がけるビジネスディレクターとして活躍。2011年に(株)アマナ入社後は、世界各地のアートシーンの調査を通じて知見を蓄積し、アートを活用したビジネスを日本企業に提案?運営している。2019年4月から4年間、武蔵野美術大学デザイン情報学科の客員教授を務めた。2021年に(株)MAGUSを設立し、代表取締役社长に就任。退任後の現在は、(株)青幻舎?Art&Life Labで、アート事業に取り組むビジネスパーソンをつなぎ、世界とつながる場づくりに取り組んでいる。

大谷清介

玩偶姐姐
代表取締役社长

2024年11月にグランドオープンしたTODA BUILDING(以下、TODAビル)。「人と街をつなぐ」をコンセプトに銀座や日本橋と隣接する文化の中心地?京橋における、新たなランドマークとして注目を集めています。TODAビルという新たなシンボルの社会的な意義やインパクトについて、ダイアログを実施しました。

开催日:2025年1月20日
開催場所:玩偶姐姐 本社ビル

「100年に一度の建て替え」がついに完了

蟹泽
罢翱顿础ビルの竣工、改めておめでとうございます。早くも约2カ月(※対谈実施时)経ちましたが、各方面から反响がおありなのではないですか?
社长
ありがとうございます。おかげさまで「京橋という街自体に存在感が生まれた」「耐震性能が素晴らしい」「ゼネコンでここまでやるのは珍しい」などと褒めていただきますが、リップサービスだけではないだろうと信じています(笑)。フリーアドレスオフィスにいる社員たちも、充実して仕事に打ち込んでくれているように見えますし、OB見学会で来た元社員の方々も「こんなビルで働ける今の社員がうらやましい」言ってくれます。今年からいよいよテナントの入居も始まり、来年6月までに入居が完了する予定です。振り返ってみると、60年間使ってきた旧本社ビルからの「世紀の建て替え」には、これまで培った知見?技术だけではなく、玩偶姐姐がゼネコンとして目指したい在り方を体現していくという思いも込められています。技术面でもそれ以外の面でも、エポックメーキングだったなと実感しています。

地域のブランドを底上げする多様な価値の発信地

まずは、罢翱顿础ビルのコンセプトについて教えてください。

社长
罢翱顿础ビルは「人と街をつなぐ」というコンセプトの下、都市再生特别地区※、土地区画整理事业といった开発制度を活用し、地域防灾力の机能强化に加え、「新たな芸术?文化の拠点」を创出することを掲げています。本社ビルでありながらも、决して自分たちのためだけの建物ではなく、地域の価値を底上げする存在であることを大切に设计されています。
蟹泽
学生たちとも见学させていただきましたが、京桥交差点から来て眺めると、隣接するアーティゾン美术馆のビルととても一体感がありますね。
社长
ビルの高さも外壁などのデザインも、意识して调和させました。この罢翱顿础ビルの価値やポテンシャルを多方面に展开できた背景として、アーティゾン美术馆さんや永坂产业さん(美术馆が入っているミュージアムタワー京桥を运営)と一绪にできることになったことが大きいです。
敷地としてもともとあったのは中央通りに面した半分ですが、それをほぼ正方形の敷地にできたことで、都市再生や地域貢献のための「都市再生特別地区」の指定を受けられ、容積率が約730%から1,300%と大幅に増えて余裕が生まれたこともありパブリックアート、防灾?减灾、环境エネルギーなどと、いろいろな要素を盛り込むことができました。
先日、中央区の区長さんと会談した際は、「新しい芸術と文化の拠点ができて京橋の街に存在感が生まれ、銀座 - 京橋 - 日本橋という魅力的な街のラインがつながった」と言っていただきました。
蟹泽
公司の本社ビルというものは、セキュリティー面の理由から一般的にはもっと闭锁的ですが、このビルの1~3阶は谁もが行き交うことができ、とてもオープンな感じですね。ゼネコンの本社かつ超高层でフロア数にも余裕があり、丸ごと自社だけで使うのではないという背景が良かったのでしょう。それにより、いろいろな特徴とチャレンジが生まれたのですね。
社长
低層部は誰でも利用できる芸術文化エリアで、1階~3階の共用部 パブリックアートプログラム「APK PUBLIC」では4人の作家の作品を展示し、一定期間でまた違う作家に更新されます。作家や作品を固定化せずに変えていくのもポイントですね。隣のアーティゾン美術館とはまた異なり、当社は現代アートを積極的に紹介することで相互補完ができると考えています。芸術文化エリアの貨物エレベーターは大型で荷重4.5tまでの作品や車なども運べますよ。
私自身、アートが好きなので毎日眺めるのが楽しいですし、当社の社员やテナントに入られる公司の方も、出退勤时にここを通るだけでも、気分転换や刺激になると思います。
蟹泽
普通は1~2阶までの商业テナント阶の上にオフィスが入る「ゲタ履き」ビルが多いですが、アートを强调するのは建物の付加価値になりうる新しい発想と试みですね。お客さまが来社时に「おしゃれな空间だな」と感じてくれることは、社员の皆さまのモチベーション向上にもつながるのではないでしょうか。敷地ギリギリまで建物を建てずにセットバックさせ、ビルの前面に広いスペースを设けたのもいいですね。都心のこういう公共空间は、他には丸の内仲通りくらいしかないので希少だと思います。
社长
広场には灾害时にトイレにできる设备もありますし、エントランスロビーの1阶、中央通りに面したガラス建具や1阶のカフェの窓は回転して开放できるので、ビル内外の一体感が出せます。一部屋根のある免震広场で、両街区で中央通り侧に120尘もあるので、さまざまなイベントもにぎやかに开催できると思っています。
蟹泽
いろいろな可能性を秘めていて、これからが楽しみになりますね。技术面でも、かなり高度な取り組みをなされていますね。なぜここまで大変なチャレンジをしたのだろうと気になっていたんです(笑)。じっくりお聞かせください。
  • ※
    都市再生特別地区:都市の再生拠点として特例的に、建筑基準法で定められた一般的な法規制(容積率の最高限度など)に制約されず、自由度の高い計画を定めることができる地区。各都道府県の都市計画により決定される

技术面の注目ポイント1 耐震性能

TODAビルの技术面での注目ポイントをお聞かせください。

蟹泽
特に超高层ビル(地下3阶、地上28阶建て)の免震化はチャレンジングでしたね。非常に大変だったと思いますが、なぜそこまでやったのですか?
社长
私が昨今提唱している「突出価値」をつくりたい、「世界一」を目指せるといいな、という想いがありました。もちろん、むやみやたらとお金をかけられるわけではありませんが。TODAビルの建物全体を「見える化」つまりショールーム化して、当社の優れた技术を社外に発信し「うちならこんなことができますよ」と言えれば、技术力での受注につなげられます。特にコアウォールについては、構造設計の担当者に「どうせやるなら徹底的にやりましょうよ!」と熱く説得されました(笑)。高い剛性と耐力を確保した鉄筋コンクリート造のコアウォールを、エレベーターを囲むようにダブルH形に配置して建物の心棒とする構造です。これは当時国内で数例しかありませんでした。
蟹泽
コアウォールは耐震性能が建筑基準法の1.5倍で、揺れや変形は鉄骨の半分。揺れを小さくするので長周期地震にも強いのが特徴です。揺れが大きいと、建物自体は壊れなくても内装や家具が壊れてしまうので、コストや工期を考えても建筑主、そしてユーザーには魅力的だと思います。地下階の免震装置エリアも拝見しましたが、巨大で圧倒的ですね。直接基礎の耐圧盤の厚さが6mもあり、コアウォールを受けている積層ゴムの免震装置の上下のスラブが2.5mと3.3mの厚みでビルの荷重を受けている。ここにいれば何があっても大丈夫だと思いましたよ(笑)。
社长
地震が発生した际などは近隣の方たちに避难していただけます。积层ゴムの免震装置はビル全体で52基あります。
蟹泽
现场は何回か见学させていただきましたが、コアウォールや免震装置の他にも机械室など、完成后もビルの要所を见えるようにしているのがいいと思いました。

技术面の注目ポイント2 施工の自動化

社长
人手不足への対応と超高層建物建設の安全?省力化のため、現場では鉄骨建方の自動化施工技术を活用しました。クレーンのオペレーターも、以前のようにクレーンの上の操縦室にいるのではなく、遠隔操作です。吊荷姿勢?制御装置?仮ボルトレス?自動玉外し?自動建入れ制御など最終的には、ほぼ無人で鉄骨建方が行われることを目指しています。また、今回はビルの本設エレベーター(非常用)を工事にも使うことにしました。民間のお客さまでしたら抵抗感があるでしょうが、自社ビルなので問題ありません(笑)。このおかげで工期が大きく短期化できました。この他、自動溶接ロボットも導入しました。
蟹泽
本设エレベーターの工事での使用は画期的ですよね。シンプルな発想の転换ですが効果が大きい。こういうことは、なかなかできそうでできないものだと思います。コアウォールは、日本ではまだ少数ですが実は世界の主流です。世界标準のやりかたは今后の标準化につなげやすいので、もっと普及していいと思います。そして施工の自动化はもちろん进めなくてはいけませんが、それを何のために追求するのか。「生产性を向上させる」という目的の、さらに先を考えるべきだと思います。自动化はそれによって确保できた时间で、技能者の皆さんがもっと付加価値が高いことをやるためだと思うのです。物を运ぶようなきつくて付加価値の少ない労働はロボットが时间外に行い、技能者の皆さんが朝出勤すると必要なものがすでに现场に届いているようにする。そして技能者の皆さんは、専门性の高い仕事に集中して生产性を高めることで処遇をアップする好循环を生み出すのがベストですね。
社长
担い手を确保するためにも、おっしゃる通りだと思います。

技术面の注目ポイント3 ITの活用

蟹泽
IT技术も、かなり活用されたそうですね。
社长
建物をスマートビル化する技术として、顔認証で入退館、自動で目的階行きのエレベーターを呼び出すなどが可能なほか、照明?空調?ブラインド操作をスマホから操作できるシステムも導入しています。私自身まだ使い切れていないのですが(笑)、誰がビル内のどこにいるかリアルタイムで分かるようにもなっており、会いに行きやすくて便利ですね。コロナ禍以降、非接触型のシステムが重要な価値を持つようになり、テナントに入る企業からもこれらのシステムを採用したいと希望されています。
蟹泽
TODAビルのように、地域に開かれたビルでありつつセキュリティを確保するには、そうしたIT技术が必須ですね。いたるところに防犯カメラをつけるわけにはいきませんから。
社长
头上から风を送るよりも快适な床吹き出し空调も导入しました。また执务スペースも天井を覆わずに开けておき、各种のセンサーを取り付けられるようにしています。まだまだ完成形ではなく、今后も新しいことができるようになるはずです。

技术面の注目ポイント4 环境性能

蟹泽
环境面でもさまざまな技术を導入し、各種の認証を取得していますね。
社长
环境認証ではCASBEE※1で最上級のSランクを、また超高層複合用途ビル建物全体で、ZEB Ready認証※2取得。DBJ Green Building 認証は5つ星※3、尝贰贰顿※4はGOLD、WELL Building Standard v2※5ではPLATINUMも取得予定です。环境配慮のために用いた技术は、太陽光発電や、吹き抜けによる自然換気、フィンをつけた外壁による日射制御、気温変化の影響を受けにくい地中熱を活用した空調、などの多岐にわたります。また、この(頭上の)木のトラス状のオブジェもですが、役員フロアの内装やカフェカウンターの天板に、持続可能な林業のために当社が協定を結んでいる北海道下川町の木材(トドマツ?カラマツ?アカエゾマツ)を用いています。下川町の林業の映像は当ビルの8階ミュージアム「TODAtte?」のダイナミックビジョンでもご覧いただけます。
蟹泽
この天然木のオブジェや内装は実に美しいですね。よくある集成材ではなくて无垢材で、赤身と白太と树种※6を使い分けているのも心憎いし、建具も納まりやディテールがプロっぽい。設計か施工の担当者が木をよく知っているのでしょう。かなりの知識と技术がないとこういうものはつくれませんよ。
社长
ありがとうございます、担当者が闻いたら喜びます(笑)。これらの内装も贵厂颁? プロジェクト认証※7を取得し、トレーサビリティを确保した木材を準不燃化処理し超高层ビルで大量に使用した希少な事例として、高く评価していただきました。
  • ※1
    CASBEE(キャスビー):エネルギー効率、資源の有効活用、环境負荷の削減、利用者の健康と快適性という4つの評価項目から建筑物の环境性能効率を5 段階で評価する国際認証制度。
  • ※2
    ZEB Ready(ゼブ?レディ):年間の一次エネルギー消費量で基準値から50%以上削減した、高断熱化し省エネ設備を備えた建筑物。国土交通省の主導により第三者機関が認証。
  • ※3
    DBJ GreenBuilding:国内トップクラスの卓越した「环境?社会への配慮」をしたビルとして最高評価を取得
  • ※4
    LEED:世界で広く利用されている环境性能評価システムで「GOLD」を取得予定
  • ※5
    WELL Building Standard v2:TODA CREATIVE LAB 部分において最高評価を取得予定
  • ※6
    赤身:木の中心侧の色が浓い部分。古い细胞で腐朽や虫害に强い
    白太:木の外侧の色の薄い部分。若い细胞で腐朽や虫害に弱い
  • ※7
    FSC? プロジェクト认証:环境、社会、経済の便益にかない、きちんと管理された森林から生産された�之b物を使用した建筑空間などを目に見える形で消費者に届ける仕組みの国際認証制度

未来のための担い手を育成

罢翱顿础ビルは玩偶姐姐の歴史において、一つの大きな节目になりました。今后、取り组んでいきたいテーマや课题はありますか?

社长
衣食住と言われるように、人间にとって建物はなくてはならないものですから、建设业という仕事も决してなくならないと思います。しかし近年の担い手不足で、このような复雑なビルが日本ではつくれなくなってしまうのではないかという危机感を持っています。
建設業には人類最大規模のものがつくれるという重厚な魅力があり、私が入社した1980年頃は報酬や地位、そこで働く意義も高かったと思いますが、いわゆる「失われた30年」の間に、簡単さや小ささ?軽さに価値が移ってしまったような気がしています。私の母校の工学?建筑系の学生は昨今ゼネコンに就職することが少ないと聞きガッカリなのですが、蟹泽先生の学生は毎年当社に入社してくれますね。私自身は入社の動機は今思えば軽薄なものでしたが(笑)、やはり入ってみると意義がある仕事だと実感しましたし、入社してくれた人にはいい体験をしてほしいと思っています。アート、环境、海外など、やりたいと言えば社内にやる部署があります。社会的インフラは必要ですし、建設業は絶対になくならない大事な仕事だと、業界全体として発信したいですね。
蟹泽
建設業従事者の人口は、就業人口全体の減少率よりも高い割合で減っているのが現実ですが、建設業で担い手を育成するためには、協力会社へのサポートが急務だと思います。このビルも、利友会など協力会社のすごいところを集めたからつくれたのではないかと思うのです。専門工事会社を安さで選ぶようなことはやめて、大事な協力会社の体制づくりとして、ゼネコンは協力会社の中の担い手も、今まで以上にしっかり育てなくてはなりません。技术面でふれた施工の自動化も担い手不足への対応の一環ではありますが、パートナーである専門工事会社の中にいる人が、より付加価値の高い仕事ができるように、玩偶姐姐がサポートしていくことですね。今後はITでよりはっきりと各人の能力が測れるようになります。
また、建设业で离职率が高い背景には、将来が见通せないという问题があると思われるので、协力会社の方にも「これを顽张ればもっと上にいける」という道筋をゼネコンが示せるようにすると良いと思います。
社长
协力会社の方を今后ますます大事に育成しなくてはいけないのは、全くご指摘の通りです。ミュージアム「罢翱顿础迟迟别?」のダイナミックビジョンでは、実际にビル建设现场にいるような映像を大スクリーンで见られますが、映像の中でも大势の协力会社の方が顽张ってくれています。来社される协力会社の方にもぜひ见てもらいたいですね。担い手やこれから担い手になり得る人に、建设业や建设物の魅力を伝えていきたいと思っています。
蟹泽
大谷社长のおっしゃる通り、建設業はなくならない産業で、産業の規模も大きいのでもっと付加価値を付加できるはずです。DXなど開発しなくてはいけないことが多々あり、高付加価値化の伸びしろは大きいと思います。そのためにも業界全体で「脱?昭和」をし、働き方改革をしっかりやることが不可欠だと思います。

高付加価値化をどう実现するか

建设业における高付加価値化をどうやって実现するか、お考えをお闻かせください。

蟹泽
付加価値の高い建筑物をつくっていくやりかたは、今後二分化していくと考えています。
一つは、现场で设计と施工が擦り合わせて、より良い物をつくる、昔から日本が培ってきて得意としてきた「栋梁スタイル」的なやりかたです。そしてもう一つは、设计者が描いたスケッチのような早期の段阶からゼネコンが参加して実施设计をつくり込んでいくやりかたです。今后はこちらのスタイルがより重要になると思います。
社长
「実际にどうやってつくるか」までを考えられなければ良い设计はできません。逆に言うと、そこを考えていない设计だと、耐久性が足りなかったり、つくるための作业自体が危険になったりします。当社の生产设计やフロントローディングの担当部署では、设计や施工の特徴について叠滨惭モデルを使って见える化し、设计者?施工者?発注者の早期合意形成を図り、「着工前」の「できるだけ早いタイミング」で、施工に関わるあらゆる课题を解决しておくようにしています。
蟹泽
御社の生产设计职は就活中の学生に人気ですが、御社は施工図部门が内製化されていて设计と现场の距离感が近く、生产设计を通して建设の仕事の全体に関わることができ早く一人前になれるという期待感があるからだと思います。
従来の日本の建设业は、スケッチに描かれたイメージを実际につくれるように详细设计するという、最も付加価値の高いクリエイティブな仕事を、ゼネコンは受注のために无料サービスにしている面がありますね。そこは改め、详细设计のプロセスだけでお金を稼げるようにしていいと思います。叠滨惭の时代にはますます大事になりますし、何よりも仕事として面白いですよね。
社长
はい。そのためには、设计者が现场をよく知って、设计と现场がいい関係性をつくることが不可欠です。私も现场で施工のノウハウを教わったことで、设计の理解が深まった経験があります。

これからが「Build the Culture.人がつくる。人でつくる。」の本番

今后も取り组むべき玩偶姐姐の课题をどう思われますか?

社长
未来ビジョン颁齿150で示した4つの事業展開領域※は、人間にとってすべて必要なことで、どの領域でもわれわれが価値を提供できることを示していかなくてはなりません。それとともに、TODAビルのこれからともいえますが、ブランドスローガンの「Build the Culture. 人がつくる。人でつくる。」を実践する。つまり「ただ単に建物をつくるだけではなくて、その先の人の営みをつくっていく」ことです。
つくったビルにオフィスやテナントを集めてしっかり运営し、にぎわいを创出していく。そしてまた新たなクローズドループ(ものをつくり、运用し、解体し、またつくり直すというサイクル)から得られた知见を、さまざまなところでわれわれの力として発展させていきたいと考えています。
  • ※
    4つの事業展開領域:スマートイノベーション領域/ビジネス&ライフサポート領域/都市?社会インフラ領域/环境?エネルギー領域

対谈を振り返って

蟹泽
社长にいろいろとお聞きして、いろいろな気持ちのこもった社屋だと再認識しました。建設途中のことなどは、今日のお話を聞いて初めて知りました。建設業界や玩偶姐姐の未来への想いを実感しましたし、社員の方たちにもここに託された「夢」をぜひ感じてほしいですね。
社长
蟹泽先生には重要なご指摘やご提言をいただきました。担い手の育成はまさに喫緊の課題で、どこまで施策をやれるかが死活問題だと思います。当社やゼネコンだけの課題ではなく、建設業全体の切実な課題としっかりとらえ、業界や国とも話し、全社で取り組まねばなりません。今日は本当にありがとうございました。

ダイアログ参加者プロフィール

蟹泽 宏剛(かにさわ ひろたけ)氏

芝浦工業大学 建筑学部 建筑学科 教授
戸田みらい基金 理事

千葉大学大学院工学研究科修了。芝浦工業大学建筑学科教授の傍ら、国土交通省「専門工事企業の施工能力の見える化等に関する検討会」座長、国土交通省?厚生労働省「建設工事従業者安全健康確保推進専門家会議」委員長などを歴任し、建設業界の労働环境改善に取り組む。専門は建筑生産、建筑構法(主に木造)。工学博士。

大谷清介

玩偶姐姐
代表取締役社长

大谷社长のもとで推進してきた「働き甲斐改革」は2024年に4年目を迎えます。3年間の取り組みを経た今、改めて取り組むべきポイントとは? 日本企業の人材育成について、ご自身の経験と理論に基づき人材育成論について情報発信をしている坂井風太さん(Momentor代表)をお招きし、ダイアログを実施しました。

开催日:2023年12月13日
開催場所:玩偶姐姐 本社ビル

今、改めて考えたい。「働き甲斐改革」は本当に社员の皆に届いているのか?

社长
本日はお越しいただきありがとうございます。今回、坂井さんにぜひお会いしたいと思ったのは、当社の人材育成とマネジメントの现状について、専门家でいらっしゃる坂井さんの知见や経験を伺い、人の能力を引き出し、强い组织をつくっていく取り组みにヒントをいただけたらと考えたからです。
そしてまた、若い人たちの仕事やキャリアについての価値観や考え方についても、ぜひ詳しくお聞きしたいからでもあります。当社でも多くの若手が働いてくれていますが、その人たちに対して「これまでどおりの向き合い方でいいのだろうか?」「私たち上の世代は、若い世代をちゃんと理解できているのか?」ということを、今改めて問い直しています。これは社长である私一人の問題意識ではなく、管理職やベテラン世代も、同じような疑問や迷いを抱えているのではないかと思っています。どうぞよろしくお愿いします。
坂井
はい。おっしゃるとおり、若い世代を含め、働く人たちの可能性を引き出し、组织の力を强くして目标を达成していくためには、その人たちの価値観や考え方を的确に理解し、そこにしっかり刺さる?腹落ちするように働きかけるマネジメントが必要です。本日はこれまでに私が経験し学习してきた事例や理论をご绍介することで、何かのご参考になればと思います。こちらこそどうぞよろしくお愿いします。
社长
坂井さんが出演されている YouTube チャンネルを拝見しましたが、企業における人材育成の課題についての、情熱的で理論的な語りが印象的でした。この分野をご専門として起業されたきっかけやモチベーションは何だったのですか?
坂井
ずっと組織マネジメントの仕事をしてきたというキャリアはありますが、この仕事へのモチベーションは、私自身の経験にあります。入社1年目の頃は「出来の悪い社員」と見なされていたのですが、2年目に別の先輩につくことになったら、急に評価が上がったのです。私自身の資質は何も変わらないのに、指導係やメンター的存在の関わり方しだいでこんなにパフォーマンスや評価が変わるのかと驚きました。若い人たちが SNS などで「配属ガチャ(※)が会社员人生を决める」などと言いますが、実は「上司?先辈ガチャ」のほうが重要です。
そして、自分が中坚の人事担当になったとき、人材育成やマネジメントが上手ではない、または意识が低いマネージャーにどう働きかけるかという际に、経験と理论をベースに话すことで、感情的にならずに纳得してもらいやすいと実感しました。このように、実践知と理论を共有して话し合うことで、组织の课题を解决できると确信したことが、この仕事を続けるモチベーションになっています。
  • ※
    配属ガチャ:新卒入社の场合、配属まで部署?职种?勤务地などが分からず(本人は选択できず)、希望どおりにいくとは限らないことを、カプセルトイ(ガチャガチャ)になぞらえた言叶。「当たり外れがあるが、引いてみないと分からない」といった不安や、入社后の自分の运命が一方的に决められてしまうことへの皮肉を込めた表现。
社长
なるほど。ご自身の体験を経て理论を语られているからこそ、説得力があるのですね。
社长
それではまず、私が社长に就任した2021年から進めている「働き甲斐改革」について説明させていただきます。「働き甲斐改革」とは、「働きやすさ改革」と「仕事のやり甲斐アップ」の両立を目指すものですが、この3年間で行ってきた具体的な取り組み内容を、人材育成に関するものに絞って、簡潔にご紹介します。最初の2021年度は、「働き方改革から働き甲斐改革へ」を新たなテーマとして掲げ、「連帯感?達成感?公平感の達成」「自己発働型社員の育成」「価値観の再構築」を提唱しました。
具体的な施策としては???
社长
このように「働き甲斐改革」に3年间取り组んできましたが、実は今「働き甲斐というキャッチフレーズやこれらの施策が、若い人たちや中坚?ベテラン层など、みんなの心に本当に届いているのか?」と问い直しており、この先は何を掲げるかを思案中です。

「不満はないけれど、不安はある」若い世代が抱える时代背景や时间轴を理解することが大切

坂井
詳しいご説明をありがとうございました。玩偶姐姐でもすでに必要性を認識して改革に取り組まれているように、人材育成が企業力の向上にレバレッジをもたらすのは確実だと思います。一方、方向性の誤った施策が逆効果となりやすいのも現実です。ご質問をいただいた「若い世代が仕事や職場环境についてどのように感じ、考えているか」ということに触れつつ、現代日本の企業における「若手育成」の現状と課題をお話しします。まず、若い人たちが会社や職場に対して「いても無駄」「言っても無駄」と見切ってしまう現象が増えているように思われます。
「いても无駄」というのは「この会社?职场は働きやすいけれど、ここに居続けても成长できない」という感覚です。いわゆる「ゆるブラック公司」ですね。社内に「自分もこうなりたい」と憧れるような上司や先辈を见いだせず、「このままここにいたら、自分もこうなってしまう」と感じて早期に転职してしまうのです。このように「社内でキャリアを积んでも、どの会社でも通用する人材になれるとは思えない」ことを「キャリア安全性の欠如」と言います。
次に「言っても无駄」という感覚ですが、上司や先辈に何を提案しても「経験の浅い若手に何が分かる」と、まともに取り合ってもらえないため、諦めムードがまん延してしまいます。「キャリアの长い上司や先辈が、経験の浅い若手よりも常に正しい」という偏った考え方は「生存者バイアス」とも呼ばれます。成长への意欲が高く优秀な人ほど、このような「いても无駄」「言っても无駄」な会社?职场からは早期离脱してしまいます。
「いても无駄」と「言っても无駄」
坂井
「いても無駄」という、キャリア安全性の欠如による見切りが発生する背景には、「若手の仕事人生がより難しく長期化している」という、日本の労働环境の構造変化があります。もはや終身雇用を前提にできず、さらに高齢化や年金支給開始年齢の後ろ倒しなどで働き続ける期間は長くなるので、「早くどの会社でも通用する人材になりたい」というニーズが高まっているのです。さらに、「一人前」になるまでに必要な育成年数についても、上司世代では10年程度なのに対し、若手は2~3年と捉えていて時間感覚にギャップがあることも、「この会社にいても大丈夫なのか」という不安を引き起こします。
一方で、「言っても无駄」という諦めを引き起こす「生存者バイアス」が起こりやすい背景には、一定以上の社歴があれば谁でも人材育成やマネジメントの担当になり得るので、理论を学习していない人の、现场によってバラバラな「自己流」が横行しやすいことがあります。「无理をさせなければ成长しない」「新人のプライドは最初にへし折るのが肝心」などのセリフはその悪い例ですね。管理职?上司?先辈が、自分が受けた教育をそのまま部下に押し付け、たまたま教育方法が合っていた人だけが伸びて生き残り、その他の人はやる気や自信を失ってしまいます。その结果、生かせる人材の幅が狭まり、生存者バイアスが再生产?再强化されるのです。このように育成やマネジメントの手法は次世代に継承されていくので、早めに対処しなくてはなりません。「若手が育たない?すぐに辞めてしまう」「辞めた人とは相性が悪かった」などと言う前に、自社の育成やマネジメント体制を见直すことが必要です。
例えば、どういう生存者バイアスに遭遇していたか?

结果の前の小さな成长を见逃さないことが働き甲斐の种になる

社长
うーむ。せっかく入社してもらった社员に、「いても无駄」「言っても无駄」な会社だと失望?転职されてしまうなどということは、経営トップとして残念だとしか言いようがありません。上の世代に「生存者バイアス」があれば解消して、そういった事态をなんとしても避けなくては……。しかし「上司ガチャ」、上司や指导役の当たり外れやミスマッチはあり得るでしょうね。当社にもメンター制度があるので、メンターを一人だけではなく复数にするのはどうかと考えているのですが……。
坂井
メンターを取り入れるという点は、人材育成において大きなメリットがありますよね。自己効力感や学习意欲といったどんな时代でも必要な人间力の部分はメンターの存在によって育まれることが多いと思います。また、复数のメンターを持つことは、さまざまな视点を取り入れるきっかけになります。一方で、リスクがあって、メンター间での助言が食い违うと若手が当惑しますし、自分がチェックされているように感じる「モニターストレス」も増えやすくなるので、その点は要注意です。一般的に育成やマネジメントを行う主役はミドル(中间管理职)层になりますが、「一つの会社で终身雇用が当たり前」「会社に尽くすのが当たり前」ではなくなった今、事业と组织运営の両方を担わなくてはならないミドル(现场管理职)层の负担は急増しています。ミドル层による适切な育成を期待するだけではなく、全社员がマネジメントの理论を学び、「このやり方は良くなかったな」「このやり方はうまくいったから他の仕事でも试してみよう」などと、自分で気付いて把握する経験学习が重要です。そうすることで、社内の真の経営课题も明确化すると思います。
社长
よく分かりました。先ほど「キャリア早期での见切りが発生している」というご指摘があったように、若い人はタイム?パフォーマンスを重视するようですね。働き甲斐を実感してもらうには、若いうちに成功体験を积んでもらうことが有効ではないかと思っているのですが。
坂井
おっしゃるとおりですね。成功体験をひもとくと、私は営业成绩といった客観的な成功体験と、「できなかったことができるようになった」という主観的な成功体験の2种类に分けられると考えています。いかに主観的な成功体験を重ねていけるか、そしてこれをメンターなどの周りの人が気づかせてあげられるかが大切です。売り上げや受注件数といった谁もが分かりやすい成果が出る前に心が折れてしまう场合もあるので、そのずっと前の段阶で、小さな达成感を抱ける経験を重ねてもらえるといいですね。
「2週间前はできなかったことが、今はできるようになった」などと、段阶的に少しずつでも伸びている?进歩している実感を持ってもらい、上司や先辈もそれをフィードバックしていくと良いと思います。そして结果的に「成果も出せた」となればベストです。
社长
「いてもムダ」(成长できない会社にいても时间のムダ)という感覚から、若い世代にキャリア早期での见切りが発生しているという坂井さんの分析をお闻きすると、経営者として「何とかしなくては」と痛切に感じます。意欲が高く优秀な若手に辞められてしまうのは、公司にとって大きなダメージですから。
キャリア早期の见切り现象
坂井
「自分なら挑戦したことを达成できる」という自信を「自己効力感」といい、この感覚が意欲や顽张りの土台になりますが、会社という组织で能力を発挥してもらうにはそれだけではダメで、「自分たちならできる、だからこの会社でやりたい」という「组织効力感」が必要です。组织効力感がある职场とは、「いてもムダ」感のある职场の真逆ですね。自己効力感だけで组织効力感がない场合は、「自分ならできるけれど、别にこの会社でやる必要はない」と感じ、会社や部署の业绩が厳しくなってくると、どんどん人が辞めてしまいます。反対に组织効力感があれば、「状况は厳しいけれど、この仲间たちとならまだまだ行ける気がする」と踏ん张ることができ、停滞から脱出できる可能性が大きいのです。
社长
なるほど。私は働き甲斐改革を推进するにあたって、「デビッド?シロタの言う『热狂する社员』になろう」と社员たちに呼びかけてきました。热狂する社员とは、达成感?连帯感?公平感がもたらす高いモチベーションを持ち、组织と自分を同一视している、つまり会社に自分のアイデンティティを重ねている人です。连帯感を抱き、会社と自分を同一视することは、「组织効力感」と共通しているように思えますね。
坂井
大谷社长ご自身が「熱狂する社員」であろうとしているのですね。働き甲斐改革に地道に取り組まれているその熱量は、どこから来ているのでしょう? 社长ご自身の働き甲斐は、どんなものなのですか?
社长
私自身の働き甲斐というと、若い顷から「仕事で会社に贡献したい」と思っていました。そう考えることで仕事を顽张れるからという面があったと思います。「自分のために」ではなく、「他の谁かや会社のために」と思う方が顽张れるタイプなんです。性格的に、个人プレイよりもチームプレイが好きだからかもしれません(笑)。

人材育成の理论や言动を社内で共有することが大事

坂井
今日、ほとんどの公司が组织改革や人材育成に取り组んでいる一方で、同じポイントでつまずいているケースも多く见られます。そういった现代の日本公司における「组织制度の叁大问题点」についてご説明します。
まず①「働き甲斐」を置き去りにした「働きやすさ改革」の问题ですが、御社はすでに3年前から「働き甲斐改革」で手を打たれていますね。
第二に、②人材育成における「勘とセンスと自社流」の横行です。「自分はこのように育ってきたから、若手も同じように育てればよい」という生存者バイアスが止められないと、上司?先辈と同じタイプ以外は「やればできる」という自己効力感を持つことはできず、「上司や会社に言ってもムダ」と内部の白けムードが进んでしまいます。
最后に、公司のトップが対外的アピールとなる③「空中戦」を重视し、真に重要な现场の「地上戦」を軽视してしまうという问题です。新部署の设立や新しい制度?研修の导入など、メディアや投资家からのウケの良さそうな新施策に投资する一方で、组织の実态をつくる基盘である、现场の中间管理职层には具体的な支援がない。これでは组织効力感は育ちません。
近年、企業が陥りがちな 人事?組織施策の三大問題点
社长
「空中戦」と「地上戦」のギャップを埋めなくてはならないということですね。そのために具体的にどんな施策や支援に落とし込んでいくべきか。働き甲斐改革の取り组みを始めて3年経った今、思案しているところです。
坂井
施策として、マネジメントや人材育成の理論を全社的に共有し、その用語を共通言語化することは有効だと思います。それを実践して成果が出ている有名企業もあります。人財育成やマネジメントでは、会社が箱(制度や仕組み) をつくって「後はうまくやってね」と現場に言うだけではダメで、現場の担当者に道具(使える理論)を渡すことが大事です。ともに理論を学び、具体的にどんな言葉を選ぶといいかという細部まで、用語を共有するのです。例えば、上司が部下と面談する際は、最初に「もし自分(上司) の言うことがあなたの認識と違っていたら、遠慮せずに指摘してね」と声をかけることで、生存者バイアスのリスクを避けることができる、というようなことです。
社长
なるほど。全社的に共通言语を持つことの必要性を再认识しました。私も、人间の社会的成长や成人発达理论について话をするとき、理论や概念のフレームを相手と共有しているとすごく伝わりやすいと実感するので纳得です。今日うかがったことについても、私が理解するだけではなくて、社内で共有しなくては。本日はありがとうございました。
共有すべきマネジメントや人材育成の理论

対谈を振り返って

坂井
大谷社长が「働き甲斐改革が若い人に本当に響いているのか、この方向性を続けるべきなのか、思案している」とおっしゃっていましたが、トップがそのように「迷いもある」と率直に言えることが、健全で大切なことだと感じました。それは経験に裏打ちされた語りでありながらも、それを絶対視しないという姿勢で、生存者バイアスとは対照的です。自社文化を常に問い直し、真摯に検証している玩偶姐姐さんの、今後の人材育成に期待しています。
社长
リアルな分析とご経験に基づいた理论、豊富なノウハウ(実践知)をお闻きして、非常に目からウロコが落ちました。今日の対谈で考えさせられたことを、社员の皆さんへの発信に结び付けていきたいと思います。

ダイアログ参加者プロフィール

坂井 風太氏

株式会社Momentor 代表

1991年生まれ。2015年DeNAに新卒入社。DeNAトラベル(現エアトリ)、ゲーム事業部、小説投稿サービス『エブリスタ』などの部署で、サービス責任者、組織マネジメント、事業統括を担当。19年エブリスタ?DEFSTUDIOSの取締役就任。20年エブリスタ代表取締役社长就任。22年8月、DeNAやベンチャー向けファンドから出資を受け、人材育成?組織強化をサポートするMomentorを設立。

大谷清介

玩偶姐姐
代表取締役社长

当社では4月から新人事制度の运用が开始※されます。そのキーワードとなる「働き甲斐改革」は、大谷社长が就任以来、重要課題として掲げ、推進してきたもの。この働き甲斐について改めて考える機会とするため、株式会社 働きがいのある会社研究所 代表取締役社长?荒川 陽子さんをお招きし、ダイアログを実施しました。

  • ※
    ダイアログ実施 2023年1月

开催日时:2023年1月17日
場所:玩偶姐姐 本社ビル

改めて、「働き甲斐」とは?

荒川さんが代表を務められているGreat Place To Work? Institute Japan(以下、GPTW Japan)は、企業や組織の「働き甲斐」に関する調査?分析を行い、基準を満たす企業をメディアで発表しています。専門家としてのお立場から、改めて「働き甲斐とは何か」を教えていただけますか。

荒川
当社の考える「働き甲斐」とは、快适に働き続けるための就労条件などの「働きやすさ」と、仕事へのモチベーションなどの「やりがい」の両方がセットになった概念です。ただし、働きやすさは労働时间や休暇日数など、多くの公司で共通の指标でとらえられるのに対して、仕事の何がやりがいとなるのかは、公司によってかなり异なります。ですから公司が働き甲斐を向上させたいと思う场合、その公司が「何をやりがいにしたいか」というビジョンを、従业员にはっきりと示すことが大事です。
社长
働き甲斐を得るためには、私は「働きやすさ」と「やりがい」に加え、「达成感」「连帯感」「公平感」の叁要素が欠かせないと考えています。これは私が部长时代から参考にしている、『热狂する社员』デビッド?シロタ着(栄治出版)において、ハイ?パフォーマンスに必要とされている要素です。
荒川
「达成感」と「连帯感」はやりがいと、「公平感」は働きやすさと结び付きますね。

いま「働き甲斐」が求められる理由

今日の产业社会や働く现场で、「働きやすさ」と「やりがい」をあわせた「働き甲斐」が求められるようになってきたことには、どんな背景があるのでしょう。

荒川
当社では「働きやすさ」と「やりがい」の二つの轴から、职场を四つのタイプに分けて分析しています。高度成长期からバブル期まで、多くの日本公司が猛烈に働く「ばりばり职场」でしたが、バブル崩壊后は「しょんぼり职场」が増えました。2019年からの政府主导の「働き方改革」は「働きやすさ」に比重が置かれていたため、やりがいは现在も低いレベルにとどまっています。政府や公司が「働きやすさがある程度达成されたら、次はやりがいを」という姿势にシフトしたのは、必然的な时代の流れだと思います。
社长
私は2021年4月の社长就任時から「働き甲斐改革」を掲げて取り組みを主導してきました。まず残業時間を減らすことに着手し、削減は進んでいます。しかし残業時間を減らすだけでは生産性は上がりません。業績を伸ばして企業として成長していくためにも、やりがいをアップして時間当たりの生産性を上げる働き甲斐改革が必要です。ブラック企業はもちろんダメですが、「仕事は楽だけど、やりがいも成長もない」という「ゆるブラック企業」でもダメなんです。
荒川
若い人には2年か3年か、がむしゃらに仕事に没头する时间、その仕事でプロになるための时间が必要ですね。残业の规制があるなかでそれをどう获得するか、経営者は皆さん悩んでいて正解は见つかっていません。
社长
私自身も年に何百时间もの残业のなかで仕事を学んできましたが、今はそういう时代ではなく、2024年4月から建设业でも残业时间の规制がかかるようになります。时间内の労働时间をいかに有意义にするか、また、资格取得のための勉强をするなど、私的な时间もいかに有意义にするかが问われると思います。

公司と人は「働き甲斐」でどう変わる?

荒川
働き甲斐が向上すると、自分らしさを活かしながら働け、自分のパフォーマンスを最大化できていると実感できるようになります。このことが公司の业绩アップやイノベーションにつながります。当社の调査でも、业绩の伸び率が最も高いのは「いきいき职场」です。
社长
そのお话には『热狂する社员』と共通するところがあって、共感しますね。「働き甲斐」のある公司になることで、従业员満足度が向上してパフォーマンスも上がり、それが顾客?サプライチェーン(协力会社)?さらにシェアホルダー(玩偶姐姐、投资家)の満足向上につながり、结果的に公司価値の向上につながるのだと思います。

働く意义と価値を再构筑する

社长
「いきいきと働き甲斐を感じて働く」ためには、根本的に「働くことの意义?価値を再构筑する」ことが必要だと思います。つまり、自分の仕事をちゃんと好きになれているか、仕事に夸りや楽しさを见出せているかということで、そこができていないと働き甲斐は感じられないと思います。プロとしてこの仕事で食べていけるようになるためには、必死に勉强を重ねてその道のエキスパートになるしかない。そのためには「好きこそものの上手なれ」で、その仕事が好きでなければがんばり続けることは难しいでしょう。だからこそ、仕事を好きになる覚悟をしてほしい。
荒川
自分の仕事に意义を见出すことは、やりがいを感じるために欠かせませんね。ただ、若手が自らその意义を见つけ出すのは简単ではないと思います。そのためにも上司や管理职は、単なる武勇伝とは异なる自分たちの仕事の意义や価値を、部下にもっと积极的に、频繁に伝えていただきたいです。そうした话のなかから、若手が参考にできるロールモデル的な「成长パターン」が见えてくるのが望ましいと思います。
社长
现状では、上司と部下の関係がそうなっていない职场もあり、上司も含め効果的な育成に取り组んでいきたいです。
荒川
上司への信頼感が高い職場では、やりがいも高い傾向がありますからね。上司と部下が信頼関係を築くためには、部下のほうも上司の性格やバックグラウンドを知ろうとする姿勢が大事です。上司も神様ではなく一人の人間なので「この人のどこだったら尊敬できるか、信頼できるのか」を積極的に探すようにし、自分も自己開示してコミュニケーションをとること。お互いに「あなたのここが強みで信頼できる」と認識し合えたら、関係が良い方向に大きく変化し、任せられる仕事の質も変わるでしょう。また、直属の上司以外からもアドバイスをもらえるような、斜め上方向とコミュニケーションを取れるメンター的な制度があるとベターです。 双方の意思表示?発信が大事だということは、会社と従業員の関係でも同じです。企業は社員に「やりがい」のビジョンを明示することが重要だと最初にお話ししましたが、社員の側も「自分が何にやりがいを感じるか」をハッキリさせ、発信するようにしたいものです。そして会社はそれを真剣に聞き取り、職場でどんどん議論すること。そうすることで「やりがい」に関する会社と社員の間のミスマッチは減っていきます。社員からの要望はいろいろあるものなので、会社はどれから実現するか、優先順位をつけて取り組むことです。また、すぐに着手できないことについては、社員にきちんと説明をすることも、信頼関係の構築のために大切ですね。

「内外勤格差」をなくすには?

社长
やりがいと働きやすさのお话で痛感するのは、社内の内外勤格差の解消のためにも、外勤?现场の「働きやすさ」と、内勤?现场支援部署の「やりがい」、その両方を高めなくてはいけないということです。それには外勤と内勤の関係性も大事で、双方にリスペクトが必要なのだろうと思います。现场手当やローテーション勤务、内勤が外勤の一部の业务を代行する取り组みも始めました。内勤については、现场と物理的な距离が离れるほど当事者意识を持ちにくくなる倾向があるので、现场の存在を近くに感じられるよう现场の映像を支店でも见られるようにする、大规模な现场では现场内に内勤社员を配置するといった取り组みも行っています。
荒川
格差とは公平感の问题です。私たちの调査では、社内の公平感にギャップが大きいことが建设业界に共通の倾向だと分かりました。建设会社では内外勤のどちらでも処遇が公平か、またジェンダー?年齢?役职にかかわらず、公平?公正に功绩が认められるかどうかが问われていくでしょう。御社ではすでに人事制度改革に着手されているとのことで、さすがですね。定期的に调査を続け、その结果に対するアクションをやり切ることが重要です。

働く人の満足がお客さまの満足につながる

社长
昨年実施したアンケート調査から、従業員満足度の高い現場で担当した物件は、顧客満足度も高いという傾向があることが分かりました。実際、お客さまに「良かったよ」「次も一緒に」などと評価されると仕事にやりがいを感じるものですが、顧客満足度と従業員満足度がシンクロすることがデータからも明らかになったのです。环境分野など、当社にまだ伸びしろのある分野で提案力?説明力を発揮して顧客満足度を上げることで、社員の働き甲斐も伸ばすことができるでしょう。そうした顧客満足度を高く得られている作業所長は、若手のロールモデルにもなり得るので、作業所長の従業員満足度も継続的に高めていかなくては。
荒川
そうですね。一度の取り组みで、働きやすさとやりがいの両方が高い理想的な职场に変われるものではなく、いくつかのステップを踏むことが必要です。一度に多くを求めず、まずやるべきことにフォーカスし、计画?実践?検讨?修正という笔顿颁础サイクルを継続することで、働き甲斐が向上していきます。そして、他社でうまくいった事例が必ずしも自社では有効ではないことも多いので、その公司らしい継続的な高め方を探さなくてはいけません。ひとつの取り组みをやってうまくいかなかったから、または1年で改善しなかったからといってあきらめるのではなく、腰を据えて2~3年取り组むべきだと思います。
社长
定点観测と継続的なアクションが重要なのですね。

働き甲斐を感じるとき

お二人がご自身のキャリアを振り返ったとき、働き甲斐はどんな时に感じましたか?

荒川
私の家は自営業で父母ともにいきいきと働いていました。そのせいか自分も「人生で長時間を費やす仕事を、もっと楽しめてやりがいのあるものにする环境づくりをしたい」と思い、新卒で人材業の会社に就職しました。37歳で出産しましたが、育休が明け仕事と育児を両立する日々が始まると、やりがいと働きやすさのどちらが欠けてもならない「働き甲斐」がいかに大事かを実感するようになったのです。早い段階でリーダー役やハードルの高い仕事に挑戦することが、若手の成長を促進するということは、男女に関係なく言えることですが、特に女性は出産?育児でキャリアが中断しやすいので、なるべく若いうちに自分の強みをつくることが、人生において戦略的にキャリアを構築する上で重要ではないかと思います。
社长
私の场合、これまでの仕事人生で役职やポジションを目指したことは特にありませんでしたが、振り返ってみると、常に「大型案件では絶対に他社に负けるものか」という思いでがんばってきました。30代半ば顷までにはそのあり方に则した行动が身に付き、働き甲斐を感じられるようになったと思います。建设业という仕事には达成感とやりがいが确実にあって、例えば竣工した建物で照明が次々に点灯していく瞬间などは、胸に迫る感慨があります。私の时代は労働时间の长さを问われることはありませんでしたが、今后は労働时间の规制のなかで、同様の达成感を得られるように仕事をやりきらなくてはなりません。正直言って课题はありますが、ブラックでも「ゆるブラック」でもない、働きやすさとやりがいを両立する公司になるために、真剣な取り组みを続けていきます。

対谈を振り返って

荒川
竣工後の達成感について話される大谷社长の笑顔に、「成果を目にすることができる」建設業という仕事のすばらしさを感じました。働き甲斐の向上を自ら主導?推進するという経営トップは、残念ながらまだ多くはありません。「こういった経営者が増えるといいな」と率直に感じました。
社长
本日のお话から、働き甲斐を向上するための、定点観测と反復的?継続的なアクションの重要さを再认识しました。働き甲斐改革の一环として4月から运用がスタートする新人事制度では、成果だけでなく、「当社の社员として期待される行动を実践しているか」という行动=プロセスも评価の対象になります。决して金太郎アメのように画一的になってほしいわけではありませんが、やりがいと働きやすさの向上のために会社もできることをすべてやるので、社员の皆さんも「至诚(インテグリティ)」や「自己発働力」など、「自分が働き甲斐があると思える働き方をしているか?」を自问する评価轴を正しく持っていただきたいと思います。従业员?顾客?协力会社(サプライチェーン)といったステークホルダー全体の満足を向上し公司価値の向上につなげるために、全社一致でがんばっていきます。

ダイアログ参加者プロフィール

荒川 陽子

Great Place To Work? Institute Japan 代表
(株式会社働きがいのある会社研究所 代表取締役社长)

2003年HRR株式会社(現 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業職として中小~大手企業までを幅広く担当。顧客企業が抱える人?組織課題に対するソリューション提案を担う。2012年から管理職として営業組織をマネジメントしつつ、2015年には同社の組織行動研究所を兼務し、女性活躍推進テーマの研究を行う。2020年より現職。著書に「働きたくなる職場のつくり方」(かんき出版)。

大谷清介

玩偶姐姐
代表取締役社长

「主体性」を目指してチームづくりを続け、强いチームに成长したラグビー日本代表で主将を务めた广瀬俊朗さんをお招きして、「组织づくり」や「组织改革」について、この不确実な时代を进んでいくために、一人ひとりが今なすべきことについて、ダイアログを実施しました。

开催日时:2022年1月13日(木)
場所:シャングリ?ラ 東京

思い入れの强い建物で

社长
今日はお忙しいなか、よくお越しくださいました。年始に玩偶姐姐のあるべき姿を改めて考えたいと思っていまして、とりわけ重要なテーマが「组织づくり」や「组织改革」です。このテーマについて、2012年~13年、ラグビーの日本代表チームのキャプテンを务め、その后も数々の快挙を成し遂げた广瀬俊朗さんとぜひお话がしたいと思い、今回お招きいたしました。
广瀬
ありがとうございます。お声をかけていただき光栄です。
社长
実はこの対談会場のホテル、シャングリ?ラ 東京は、私が40代後半に、作業所長として最後に担当した現場なんです。どこもかしこも思い出だらけの場所です(笑)。
广瀬
そうなんですね。僕もこのホテルはワールドカップ(以下奥杯)の后、プライベートな会食などで何度も利用させていただきました。外国の香りがする洗练されたホテルだなと良い印象を持っています。
社长
そういえば、广瀬さんが出演されたテレビドラマ『ノーサイド?ゲーム』には当社も撮影協力し、旧本社ビルの会議室で撮影が行われました。
广瀬
そんなご縁もあったのですね。

组织づくりで大事にしていること

广瀬
チームづくりの前に僕がキャプテンとして大事にしていたのは、选手同士の人间関係づくり。また、选手たちがチームを好きでいること、别の言叶で言えば「尝辞测补濒迟测(ロイヤリティ)」の醸成です。人间関係やロイヤリティといった土壌がなければ、どんな掛け声も心に响きません。また「胜てるチーム」を目指す前に、「何のために胜つのか?」という「大义」に共感を持ってもらうことも大事にしました。当时の、负けることに惯れていた日本代表を変え、「奥杯で胜って日本ラグビーの歴史を変え、憧れの存在になり、日本中にラグビーのすばらしさを広める」という大义を持つ。この大义が腹落ちしたからこそ、みんなが一心にそこに向かっていけたのだと思っています。
社长
广瀬さんのご著書にもある「勝つチームには大義がある」ということに、強く共感しました。企業でも、組織を構成する人たちが、すべての行動を「大義」に照らし合わせて判断し、そこに向かって自律的に行動していくと良いと思います。また、インタビューなどでは「ラグビー憲章」という五つの理念(品位?情熱?結束?規律?尊重)も紹介されていますね。当社にも公司理念や経営方針があり、社員のモチベーションを高めて企業としてのパフォーマンスを上げるためには、「情熱」が不可欠です。そして、情熱を生み出すためには、公平感?達成感?連帯感が必要だと考えています。これはデビッド?シロタの著書『熱狂する社員 企業競争力を決定するモチベーションの3要素』の考え方を参考にしています。
广瀬
その考え方に纳得です。ラグビーにおける情热ややりがいは、仲间への想いから生まれると実感してきましたので。
社长
公司におけるやりがいとは働き甲斐ですが、生产性を上げるための「働き方改革」よりも、「働き甲斐改革」の方が先だと考えているんです。情热がなければ、いくら働き方を改善してもパフォーマンスは上がりません。先ほどお话しした、公平感、达成感、连帯感に支えられた情热が不可欠です。効率性が大切なのは当然ですが同时に、若いうちに「修罗场」や「壁にぶち当たるまで顽张る」ことも経験して、成长の粮にしてほしいと思っています。
广瀬
情热をいかに引き出すかが大事ですね。僕もキャプテンとして、成绩やコンディションが上がらず活跃できていない仲间をどうサポートし、引っ张っていくかを常に考えていました。监督と违って人事権のないキャプテンの役割は、谁も孤立させず「一绪にやっていこう」と同じ目线で寄り添っていくことだと思います。年次が上の先辈なども、こういった役割を担えるかもしれません。
逆に2014年にキャプテンを外れたときは、自分の存在意义と居场所を一时见失ったような感覚になりましたが、「后任キャプテンのリーチ?マイケル选手、そしてチームの仲间たちのために自分にできるサポートを最大限やりたい」と思えるようになって、再び前向きになることができました。
社长
やはり日本代表の連帯感は強固だったのですね。ひとつの目標に向かってみんなの気持ちをまとめていくことは重要だと思います。昨年の9月末、社員の満足度調査を行ったところ、「達成感」はかなり高いのですが、「連帯感」と「公平感」については、理想と現実にギャップがあることが分かりました。そのギャップや部門間格差を改善することが、社員みんなの情熱を引き出すスイッチになるはずだと確信しています。現場を担当する外勤と内勤の働く环境のギャップが大きい部分を改善し、積極的な人事制度や経営資源の適正配分なども推進するよう取り組んでいます。
ラグビー宪章の最初にあげられる「品位(インテグリティ)」は、「真挚さ」「诚実さ」などとも訳され、マネジメント论で有名なドラッカーがビジネスパーソンに不可欠としている资质です。私は「至诚」と言っていますが、そういう资质を持った人こそ、うちの会社に必要だと思っています。

成长や「学び」について思うこと

广瀬
毎日の积み重ねが大きいことをラグビーで体感してきたので、ラグビー以外についても、日々の地道な努力を大事にしています。小さくても、それが成长に向けた大事なステップになります。言叶は似ていますが、「成功」と「成长」は违うと思っているんです。成功ではなく、失败と言われるような状况でも、その経験から学んで次に活かすことができれば成长できます。先ほどお话ししましたが、キャプテンを外れた直后はいろいろと思案し、代表チームを去ることも考えました。しかしチームに残って以前とは违う形で贡献しようと决断したのは、それが自分をさらに成长する机会になると思い直したからです。どんな状况に置かれても、自分のエゴを超越して仲间のために力を出すことが、自分自身の成长につながります。
社长
2019年の奥杯のロシア戦を、东京スタジアムで観戦して感动しました。ラグビー宪章のひとつであるリスペクト(尊重)を、メンバー全员がお互いに持ってプレーしているのが分かりました。それぞれ异なるスキルをリスペクトし合い、谁かが失败しても皆がフォローする。多くの人が「ワンチーム」としてやっていくには、それが不可欠ですよね。
广瀬
そうですね。私の考えでは、同じ目标を持っていれば、个々の手段や方法论にはある程度の自由があっていいと思います。ラグビーで言うと「欲しい场所にボールを送ってくれるなら、いわゆる日本らしいきっちりしたものではなく、多少ラフなパスでもいい」というような(笑)。バックグラウンドが违う相手に対して、リスペクトを表明することが大事だと思っています。日本に试合に来てくれた海外のチームやサポーターへの感谢として、その国の国歌やアンセムを日本のみんなで歌うというのもひとつの例です。
社长
广瀬さんの「スクラムユニゾン活動」ですね。多様性やお互いの違いを尊重する姿勢に共感します。
广瀬
失败からも学べると先ほど言いましたが、失败を引きずらないでそこから学ぼうとする姿势も大事だと思います。ラグビーは天候にも左右されやすくミスや失败の多いスポーツで、僕も数えきれないくらい失败してきました。ベストを尽くしたいが勇気が持てず结果的に80%の选択をしてしまい、そうしたプレーがヘッドコーチ(监督)のエディー?ジョーンズさんの意に沿わず、ひどく叱られた试合もあります。でもその后、2015年奥杯初戦の南アフリカ戦では、自分たちの判断で选択したスクラムで得点して胜ち、「よくやった」と褒めてもらいました。「主体性」を目指してチームづくりを続け、成长したからだと思います。以前はエディーさんの指示を闻くしかないチームだったのが、主体性を磨き、自分たちで意思决定できる强いチームに成长できたのです。
社长
すばらしいですね。公司でも、社员が主体性を発挥できるようにするための権限移譲は、达成感を得るために不可欠だと思います。当社もそれを大事にしていきたいと取り组んでいます。

未来のために新プロジェクトに取り组む

社长
今年の当社は、设立150周年となる2031年から逆算して、「颁齿150で掲げる协创社会を実现するという目标のために何をやろう」と、検讨しながら进めているところです。それが社员にとっても成长につながると思います。
广瀬
僕はさまざまな活动で自分の会社の価値を上げ、「ラグビーやスポーツを通じて、社会的にこういうこともできるよ」と、子どもたちにも亲御さんたちにも示していきたいと思っています。
社长
いいですね。当社も、公司の価値を示していくようなまちづくりを行っています。従来の建设业の枠组みを超えて、地方の农地を集约して生产?加工?流通?贩売までトータルで行い、地域活性化を目指す「农业6次产业化」や、长崎県の五岛列岛での浮体式洋上风力発电などのプロジェクトも进めています。
广瀬
そんなプロジェクトがあるのですね、とても兴味深いです。僕も、まだ仕组みができ上がっていない新分野にチャレンジして切り拓くのが好きなんです。
社长
いいですね。既存の分野でがんばってる人も大事な一方、新たな技术開発では、とんでもないことを考える若手がどうしても必要になります。そういうチャレンジングな若手がいても組織はバラバラにはならないと、广瀬さんの本やお話からも感じます。ちょっと話がズレるかもしれませんが、广瀬さんはバイオリンを演奏されるそうですね。私もクラシックのコンサートに行くのが好きなんです。一人ひとりの力が全体として大きな力になるのは、オーケストラと同じかもしれませんね。
广瀬
同感です。オーケストラ全员で奏でる音が美しいように、チームの全员で成し遂げたトライも美しいと感じます。オーケストラに例えるなら、キャプテンはみんなをうまくまとめるコンサートマスター、监督は指挥者という感じでしょうか。
社长
私はコンサートで音楽に浸るつもりでいても、「パーカッションのような縁の下の力持ちが大事だな」などと、つい組織づくりのことを考えてしまうんです(笑)。企業の社长も、オーケストラの指揮者やラグビーの監督と似ているかもしれません。

対谈を终えて~今后に向けて~

广瀬
今日は貴重な機会をいただいて大谷社长とお話しでき、公平感や連帯感、喜びだけでなく辛いことをシェアすることが大事な点など、玩偶姐姐さんのものづくりの姿勢とラグビーの親和性や共通点を感じてうれしかったです。いまだにコロナ禍が続く不安定な時代だからこそ、将来へ向けた夢や未来への計画を育てていきたいと感じました。そういった前向きな取り組みが、コロナ後の明るい時代につながると思います。
社长
当社も、ラグビー憲章のように相互へのリスペクトを大事にし、自社の「ありたい姿」を追求して現状にバックキャスティングしていかなくてはと改めて感じました。今日は广瀬さんと、勇気が湧くような言葉をたくさん交わすことができました。ありがとうございました。

ダイアログ参加者プロフィール

广瀬俊朗

ラグビー元日本代表キャプテン
株式会社贬颈搁础碍鲍代表取缔役

1981年大阪府生まれ。5歳でラグビーを始め、大阪府立北野高校、慶應義塾大学、東芝ブレイブルーパスにてプレイ。1999年度U19日本代表、高校日本代表、2007年日本代表。2012~13年日本代表キャプテンを務める。2015年のW杯で日本代表史上初の同大会3勝に貢献。2016年現役引退。2019年株式会社HiRAKU設立。2020年日本テレビ系列「news zero」木曜パートナーとして出演。「スクラムユニゾン」発起人。

大谷清介

玩偶姐姐
代表取締役社长

玩偶姐姐が創業140周年の節目を迎える今年は前例のない「ウィズコロナ/アフターコロナ」の年になると予想されます。社会の不確定要素が増えるなか、いかにして当社の強みを伸ばし、課題を克服してゆくのか。そのために必要となる具体的な取り組みとは何か。今井社长(現:会長)と豊富な経験や知見を持つ4名の社外取締役が、このような社会の変化や当社の未来について、ダイアログを実施しました。

开催日时:2020年12月18日(金)
場所:玩偶姐姐本社 会議室

「现在の玩偶姐姐」を见つめ直し进むべき道を明らかにするために

今井社长(以下、社长)
2020年は年初から年末まで、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた年でした。玩偶姐姐にとっても、社員一人ひとりにとっても、前例のない、予測が付かない年だったと思います。暦のうえでは年が改まりましたが、どのような思いと姿勢で2021年を進めばいいのか、皆が迷いながら手探りしています。日々の仕事で具体的に何をどのようにするべきかという指示は、各部署にて部門実行計画などの形で伝わっていると思いますが、私は会社のトップである社长として、もっと大きなビジョンやメッセージを、社員たちに伝えていかねばならないと考えています。とはいえ、私の意見だけでは新鮮味が今ひとつですし(笑)、外から玩偶姐姐を見るとどう見えるのかということも、社員たちに意識してもらいたい。そこで、専門分野での豊富な経験と知見を活かして当社に貢献してくださっている社外取締役の皆さんと、社会の変化や玩偶姐姐の未来について遠慮なく本音で話し合い、それを社員たちと共有したいと思ったわけです。皆さん、本日はどうぞよろしくお愿いします。
社外取缔役一同
よろしくお愿いします。

新型コロナの影响でリモート化が进み働き方が大きく変わった2020年

社长
まずは2020年をどう振り返るかですが、実はこの会も部分的にリモートで开催しているように(伊丹取缔役と荒金取缔役はオンラインで参加)、20年はコロナ祸の影响で、テレワークや在宅勤务などリモートでの働き方が一気に普及したことが印象的でした。
伊丹取缔役(以下、伊丹)
丸一年、社会全体が新型コロナと共存する道を模索していましたね。新型コロナという外圧が、リモートなどの働き方改革を一気に进めました。私も本日、オンラインで参加できていることに正直惊いています。
荒金取缔役(以下、荒金)
私も、昨年の初頭にはZoom の「ズ」も知らなかったのですが(笑)、大学で行っている講義はすべてオンラインになりました。これまで遅々として進まなかった働き方改革が、新型コロナで一変したと実感します。
社长
当社も现场以外では、リモートワークや在宅勤务の社员が増えています。
网谷取缔役(以下、网谷)
リモートワークの急速な普及は、私のいる情报通信产业にとっては大きな追い风です。しかし、21年はリモートでの働き方に、评価制度や管理者のありかたをきちんと対応させられるかどうかが问われる年になるでしょう。リモートワークを、根本的な生产性の向上につなげられるかどうかで、公司にも格差が生まれてくると思います。
下村取缔役(以下、下村)
経営者のなかには「リモートワークで済むならオフィスはいらなくなるな」などと言う人もいますが、公司の仕事とはチームワークです。チームワークができない公司は存続し得ないでしょう。リモートでチームワークをどのように行うかは、皆でしっかり考えなくてはいけませんね。
社长
社内の仕事で考えると、リモートワークだと短时间で用件が済みコストは下がりますが、现状ではチームで议论しながら価値の创造をするレベルにはまだ至っていません。また力强くぐいぐいと仕事を进めていける人や状况ではいいけれど、そうではない场合のフォローアップが难しい。こうした课题が将来的に改善されていくことを期待します。
荒金
リモートを便利に使う反面、オンライン饮み会が盛り上がらなかった実体験からも(笑)、「リアルな空気を共有する」ことの大事さを再认识しました。
网谷
私の方は情報通信技术の伸びしろに肯定的な立場ですし、毎月一度はオンライン飲み会をやるうちに慣れてきて、メリットを享受しています(笑)。現状のオンラインコミュニケーション技术は、まだまだ発展途上なんです。将来、映像はもっと高精細度できれいになるはずですし、画面を映すだけではなくなるでしょう。今後5GやVRが普及するにつれ、オンラインはリアルと比べて遜色ないものになっていくと思います。
社长
私たちも、オンライン恳亲会をやってみるといいかもしれませんね(笑)。

不确実性が増す2021年守るべきものと见直すべきもの

社长
その他の面で、昨年の振り返りと2021年への展望はどうでしょうか。
伊丹
昨年を汉字一文字で表すなら、「迷」の年だったと思います。一方で、建设业界には大変厳しい年でした。2021年は、玩偶姐姐の持つコアバリューや优位性をどう活かしていくかがより问われる、足场を见直す年になるでしょうね。
网谷
昨年は、私たちが信じてきたものへの信頼が、根こそぎ失われた年だったと思います。「科学や政府が私たちの命を守ってくれる」という信頼が新型コロナによって揺らぎ、米国が広めてきた自由や民主主義の価値も、国がトランプ大統領の支持者と反対派に二分してしまったように、大きく揺らいでいます。こういった激動の年でしたが、それでも玩偶姐姐が大幅な業績低下に陥らずに済んだのは、品质や信頼を築いてきたこれまでの蓄積が活きたからだろうと思います。
下村
多くの人と同様に、私にとってもストレスのたまる我慢の年でした。私のいる自动车部品の业界も2020年は新型コロナの影响で不振、苦労の年でした。建设业界も设备投资が减ってしまいましたが、玩偶姐姐では感染対策をしっかりして、积极的に顽张っているのが頼もしいですね。
社长
リスクや胁威が前から分かっていたのに、ちゃんと準备しておかなかったためひどい目に遭うという事态を「ブラックエレファント」と言うそうですが、コロナ祸はまさにそうした侧面があります。以前から「当社が本来やるべきことを具体化してやらねば」と考えてきました。仕事が减ることもデジタル化が必要なことも分かっていたので、手は打ってきました。そのためダメージは想定内で済みました。コロナ祸だからと急に施策を変える必要はありません。よりどころのない时代だからこそ、伊丹さんのおっしゃるようにコアバリューからブレず、社员一人ひとりのポテンシャルを上げ、自分で判断できるように、自己成长を目指してほしいと思います。
荒金
新型コロナの影响はしばらく続き、元通りにならないこともあるだろうと思われます。世の中や顾客の望みがどう変わりつつあるのか、アンテナの感受性をより高く上げて短期的には素早く対応し、长期的には戦略にも思いをはせるということが必要だと思います。玩偶姐姐では社屋の建て替えも进んでいます。次のステージへの扉が开き始めたという感じがしますね。
社长
当社は「社会课题を解决する」というソーシャルビジネスの考え方を採っています。产业构造も変わっていくなか、自社の事业を、お客さまや社会の未来を作っていくことに役立てたい。例えば、お客さまに纳得していただき窜贰叠をつくることによって、お客さまの社会的な评価が上がるというようなケースもあり得るでしょう。そのようなビジネスを推进するには、荒金さんのおっしゃる「感受性」が必要なのだろうと思います。

社会とお客さま、そして自分たちにも「喜び」を提供するために必要なこと

社长
次に、公司そして当社が追求すべき「喜び」について、皆さんの経験谈やご意见を伺いたいと思います。当社は「“喜び”を実现する公司グループ」というグローバルビジョンを掲げていますが、実はこれを作ったのは、当社にとって苦しい时期でした。结果を出せず二期连続で赤字を计上し、ダメージを受けていました。そんな时こそ、何のために働いているのか、どんな幸せや喜びを世の中に届けたいのか、突き詰めて考えなければと考えたのです。
下村
私がエンジニアだったころは、製品が形になっていくことが喜びでした。困難を乗り越え何かを実現した時にこそ、仕事の喜びがありますし、その経験が力や財産になるものです。昨年12月、土木技术研究発表会に出席し、社員の皆さんの「現場力」のすごさに感服しました。現場で工夫を重ね、苦労して開発を進めた事例をいくつも知り、これこそが玩偶姐姐の強み、この現場力を伸ばしてもらいたいと思いました。
伊丹
私が検事だったころは、难しい事件を解决し、被害者の方に「ありがとうございました」と言われることが何よりの喜びでした。それまでの苦労がそのひと言で、一瞬にして报われた感がしました。玩偶姐姐の皆さんにも、「建物が完成してよかった」と言われるだけでなく、「玩偶姐姐に建ててもらってよかった」と言われるような仕事をしていただきたいと思います。
网谷
どの业界でも、社员が生き生きとして明日への希望が持てることが、経営者の一番の喜びです。今日の日本経済は市场やステークホルダーの影响力が非常に强いのですが、玩偶姐姐には社员に目を向けた施策を実施し、家族や自身の状况で大変な社员までも、优しく包摂してほしい。社员は「自分が大事にしているものを、この会社も大事にしてくれている」と思えるときに、「顽张ろう」とやる気が出てくるものです。
荒金
私が製造业で商品开発をしていたころは、イノベーションを実现し、自分のアイデアが社内に限らず世の中に受け入れられることが喜びでした。自分の作った製品で喜んでくれる人の颜が思い浮かぶと、その喜びは一层大きくなります。玩偶姐姐の一人ひとりにも、「自分が提供できる喜びって何?」と、考え続けてほしいと思います。
社长
グローバルビジョンの「喜び」は、决して自分だけの喜びではいけないのです。お客さま、协力会社、社员、その全员の喜びでなくてはならない。これは社内のコンプライアンス的な问题だけでなく、サプライチェーン全体でやっていくことです。その完成までは远いかもしれませんが、困难なことにやりがいを感じてくれる人たちが、当社には大势います。先ほどの共通认识とプライドを持って、取り组んでいってほしいですね。

玩偶姐姐の明日を担っていく社员たちに伝えたいこと

社长
最后に、今后に向けて、当社の社员へのメッセージをお愿いします。
下村
玩偶姐姐の方たちには、自分たちの部署で何を创造していくかを意识して、仕事の场で「仕掛け人」になってほしいと思います。「これは玩偶姐姐の柱になるか?」としっかり考えながら、どんどん仕掛けていってください。
伊丹
企業行動憲章にある「安心で良質な建設物」を提供し続けることは、一見簡単なようで極めて難しいと思います。技术力の向上ももちろん必要ですし、その前に、激動の時代に多様化するお客さまのニーズを的確にとらえること、さらに、そこに「玩偶姐姐らしさ」を見つけていくことも求められるわけです。こうしたレベルの高い要請に応えられるよう、他の社員や協力会社とも一緒に、力強く進んでいただきたいと思います。
荒金
アフターコロナの時代は、建設物の姿も変容していくと考えています。これまでは人間を外の世界から隔離して守るための建物が主流でしたが、今後はむしろ外の世界との交流?共存を促すような建物が求められる時代になるのではないかという印象を持っています。これまで玩偶姐姐は、着実に実績を築き、業界や 社会における存在感を示してきました。これからはそれに加え、目指す社会や建設物の「将来像」を世の中に示して、広く共感を得てゆくことが大事だと思います。玩偶姐姐がやっていることをもっと多くの人 に知ってもらう広報活動や、ブランド化を進めるためにも、こうしたことが重要なポイントになるのではないでしょうか。
网谷
私は四点挙げたいと思います。第一に本業を極めること。そのためには他社が真似しようとしても追いつけないような現場力をさらに進化させていくことです。第二に、新エネルギーや農業の6次産業化などの新規事業を推進するために、体力のあるパートナーや仲間を作り増やしていくこと。第三に、海外事业の「ここは他社に負けられない」というコアバリューの領域では、現地法人に任せず玩偶姐姐本体が頑張ること。最後に、人材力強化と変革のためにも、リーダーを仕立てていくこと。「適任者がいれば育てる」ではなく、無理矢理にでもリーダーを作るような勢いで、幹部層に限らず全階層で候補者を選び、やらせてみるのです。そこでは失敗も恐れず、どんどんチャレンジできることが重要です。
下村
挑戦も失败もしない无难さより、失败したのは挑戦したからと意欲を评価する职场文化を培ってほしいですね。
社长
下村さんや网谷さんがご指摘くださった、仕事を仕掛けられる現場力や人材力の強化が、まさに玩偶姐姐の未来を決定するのだと思います。今後、女性をはじめ多様な人材を経営幹部に登用することや、一人ひとりの倫理観を磨くためにコーポレートガバナンスの整備にも取り組んでいきます。それが、失敗を恐れずチャレンジするために不可欠な基盤にもなるでしょう。皆さんにはそのためにも今後も厳しく温かいご助言をお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。

ダイアログ参加者プロフィール

下村节宏

1969年三菱電機(株)に入社。30年以上にわたり自動車機器の開発に携わった後、2001年取締役、2003年常務取締役を経て、2006年に取締役代表執行役執行役社长に就任。2010年に取締役会長。2014年より当社社外取締役、2018年より三菱電機特別顧問を務める。

网谷駿介

1970年に日本電信電話公社(現NTT)に入社。テレホンカードやダイヤルQなど新サービスの立ち上げに携わる。1999年にNTTコミュニケーションズ(株)取締役に。その後、2004年にはNTTコムウェア(株)代表取締役副社长に就任。2014年より当社社外取締役を務める。

伊丹俊彦

1980年検事任官。东京地検検事正、最高検次长検事などを歴任し、2016年9月大阪高等検察庁検事长を最后に退官。司法试験委员会委员、法制审议会委员等歴任。2016年11月から长岛?大野?常松法律事务所顾问弁护士として、コーポレートガバナンス、コンプライアンスなどを扱う。2018年より当社社外取缔役を务める。

荒金久美

1981年に(株)小林コーセー(現コーセー)に入社。薬学博士として研究開発、商品開発に携わり、2006年に執行役員マーケティング本部副本部長に就任。2010年研究所長、2011年3月品质保証部長を経て2011年取締役、2017年常勤監査役。2020年より当社社外取締役を務める。

今井雅则

玩偶姐姐
代表取締役社长(現:会長)

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